ロコモを防ぐ運動「ロコトレ」 暮らしの中に運動習慣をとりいれよう
腰や膝が気になる人に 食生活でロコモ対策
運動器とロコモ
あなたの身体を動かす仕組み「運動器」をご存知ですか?
運動器とは?
人間の身体は機能ごとに分業しています。酸素を取り入れ二酸化炭素を排出する”呼吸器”(気管や肺)、酸素や栄養、老廃物など運ぶ血液を流す”循環器”(心臓や血管)、食物を消化・吸収する”消化器”(胃や腸)などはよくご存知でしょう。
同じように人が自分の身体を自由に動かすことができるのは、骨・関節・筋肉や神経で構成される”運動器”の働きによるものです。骨・関節・筋肉はそれぞれが連携して働いており、どれかひとつが悪くても身体はうまく動きません。
人生の最後まで自分の足で歩く…
健康寿命を延ばしましょう。
「健康寿命」という言葉をご存知ですか?健康寿命とは、健康上の問題のない状態で日常生活を送れる期間のことです。平均寿命と健康寿命の間は、男性で9年、女性で12年の差があります。
誰もが最後まで、健康でいきいきとした生活を送りたいと思っています。健康寿命を延ばしましょう。
自立度の低下や寝たきり、つまり要支援・要介護状態は健康寿命の大敵です。そしてその原因の第1位は「運動器の障害」だということをご存知ですか?
要介護や寝たきりは、本人だけでなく家族など周囲の人にとっても問題になります。自分のみならずあなたの大切な家族や友人などのためにも運動器の健康を維持しましょう。
「まだ若いから関係ない」?
若いうちからの運動習慣が重要です。
骨や筋肉の量のピークはおよそ20~30代だということをご存じでしたか?骨や筋肉は適度な運動で刺激を与え、適切な栄養を摂ることで、強く丈夫に維持されます。弱った骨や筋肉では、40代・50代で身体の衰えを感じやすくなり、60代以降、思うように動けない身体になってしまう可能性があります。
筋肉、骨と同様に軟骨や椎間板にも適正な運動負荷が必要です。ただし、過度なスポーツや過体重によって「負荷をかけられすぎる」と軟骨や椎間板は逆に痛んでしまうことになります。また、痩せすぎると筋肉や骨は弱くなってしまいます。肥満も痩せすぎもよくありません。あなたにも心あたりはありませんか?
運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態を
「ロコモティブシンドローム(ロコモ、運動器症候群)」といいます。
進行すると介護が必要になるリスクが高くなります。
ロコモは筋肉・骨・関節・軟骨・椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、歩行や日常生活に何らかの障害をきたしている状態をいいます。2007年日本整形外科学会は人類が未だ経験したことがない超高齢社会・日本の将来を見据え、このロコモという概念を提唱しました。
いつまでも自分の足で歩き続けていくために、ロコモを予防し、健康寿命を延ばしていくことが今必要なのです。
どうしてロコモになるの?
ロコモに関係する要因や症状。心あたりはありませんか?
健康な状態から要支援・要介護に至るまで、移動機能はひそかに衰えていきます。
少しずつ進行する移動機能の低下に気づかないふりをしていませんか?
「日常の生活習慣」と「適切な対処の有無」によって、移動機能は大きく変わります。 年齢に関わらず、思い当たる習慣や症状がある場合には、生活習慣を見直す、運動習慣を身につける、医療機関を受診するなど、適切な対処が必要です。 |
「ロコモ度テスト」でしらべよう!
年代相応の移動機能を維持できていますか?「ロコモ度テスト」とは
「ロコモ度テスト」は、同年代の平均と比べ、現在の自分の移動機能を確認するためのテストです。それぞれのテストの結果が同年代の平均に達していない場合、現在の状況が改善されないと、将来ロコモになる可能性が高いと考えられます。
1)立ち上がりテスト (脚力を調べる) |
2)ステップテスト (歩幅を調べる) |
3)ロコモ25 (身体の状態・生活状況を調べる) |
||
「ロコモ度テスト」は3つのテストから成っています。 正しく安全に測定が行えるように自分一人ではなく、他の人の介助のもとに測定してください。 |
ロコモを防ぐ運動「ロコトレ」
続けることが肝心です。
「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」でいつまでも元気な足腰を。
ロコトレはたった2つの運動です。毎日続けましょう!
暮らしの中に運動習慣をとりいれよう
柔軟性を高めたり、身体活動量をあげる工夫も行いましょう。
<柔軟体操とストレッチング>運動する前の準備、または終わった後の整理運動にもなります。
ポイント | ・呼吸は止めないようにしましょう。 ・20~30秒程度、ゆっくり伸ばしましょう。 ・痛いと感じない程度に、適度に伸ばしましょう。 ・ストレッチする部位の筋が十分伸びている感覚を意識しましょう。 ・反動をつけたり、押さえつけたりしないようにしましょう。 |
毎日の生活に「+10」の習慣を! 今より10分多く身体を動かすことが、ロコモの予防になります。たとえばこんな「+10」もトライしてみませんか? |
|
・自転車や徒歩で通勤する。 ・エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う。 ・掃除や洗濯はキビキビと、家事の合間にストレッチ。 ・テレビを見ながら、ロコトレやストレッチ。 ・仕事の休憩時間に散歩する。 ・いつもより遠くのスーパーまで歩いて買い物にいく。 ・近所の公園や運動施設を利用する。 ・地域のスポーツイベントに参加する。 ・休日には家族や友人と外出を楽しむ。 ・歩幅を広くして、速く歩く。 |
|
そのほか、ラジオ体操、ご当地体操などいろいろな運動がロコモ対策になります。 |
腰や膝が気になる人に
腰痛や膝痛対策にはこんな体操を!痛みなどの症状がある人は医療機関に相談して行いましょう。
食生活でロコモ対策
しっかり動いたら、しっかり栄養を!
ロコモ対策になる食生活とはどんなもの?
運動器の中でも骨や筋肉は、材料となる「栄養素」が不足すると強くなりません。毎日の食事から、骨や筋肉に必要な栄養素を摂り、ロコモに負けない身体を作りましょう。
メタボも痩せすぎも要注意!
正しい食生活で運動器の健康を守りましょう。
中高年の男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボリッックシンドローム(メタボ)、またはその予備軍といわれています。メタボは動脈硬化を進行させ、心臓病など命にかかわる病気を招く危険性がありますが、怖いのはそれだけではありません。肥満になると、体重が増えた分、腰や膝に負担がかかり、ロコモの原因になるのです。
一方、ダイエットや食欲不振などによって栄養が不足すると、骨や筋肉の量が減ってしまいます。とくに若い女性の極端なやせ志向や高齢者の低栄養状態には要注意。ロコモに陥らないためには、メタボや痩せすぎにならないよう食事に気をつけることが重要です。
「5大栄養素」を1日3回の食事からバランスよく摂ることが大切です。
では、どういう食事がロコモ対策になるのでしょうか?
私たちが健康に生きていくために欠かせない栄養素は、炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルのいわゆる「5大栄養素」。これらは運動器の機能を保つのに欠かせません。「5大栄養素」を毎日3回の食事から摂ることが大切です。
料理は大きく分けると「主食」(炭水化物を多く含むご飯やパン、麺類など)、「主菜」(メインとなるおかず:たんぱく質を多く含む肉、魚、卵、大豆製品など)、「副菜」(付け合せのおかず:ビタミン、ミネラルを多く含む野菜、海藻など)の3つになります。1日3回の食事にこの主食、主菜、副菜を揃え、牛乳・乳製品や果物なども組み合わせると、5つの栄養素をバランスよく摂ることができます。
栄養バランスは、1週間の中でととのえても大丈夫。
無理なくそろえるのが続けるコツです。
バランスよくといっても、忙しい朝は無理という方は、たとえばパンに牛乳や果物をプラスしてみたり、おにぎりに味噌汁をプラスするだけでも、栄養バランスがよくなります。
主食、主菜、副菜を1食の中で揃えるのがむずかしい場合は、1日の食事の中でトータルに、それもむずかしい場合は、1週間の中で無理のない程度にそろえてみましょう。栄養はきちんと食事から摂ることが大切です。
献立に変化をつけたり、大勢で食卓を囲んだり…
楽しく食べる工夫をしましょう!
どの世代でも、不規則な生活を続けると身体に本来備わっているリズムが崩れて、健康障害を引き起こすリスクが高まります。そういう場合は、まず生活のスタイルを見直すことが大切です。近年は高齢者の栄養不足も問題になっています。高齢になると食が細くなる傾向がありますので、3回の食事以外に午前と午後のおやつを加えて不足した栄養を摂るのもいいでしょう。
きちんと栄養を摂るためには、食べたくなるような工夫が必要です。和食・洋食・中華など献立に変化をつけたり、色の濃い野菜などを取り入れて、食卓を彩り豊かにするといいでしょう。また、家族や親しい人たちといっしょに食卓を囲んだり、外食やアウトドアでの食事も効果的です。盛り付けや器など見た目にも工夫をして、楽しく食事をしましょう。
望ましい食生活を身につけましょう |
バランスの良い食生活を実現するには、栄養面だけでなく、暮らし全体から食生活をとらえることが大切です。望ましい食生活のあり方を定めた次の「食生活指針」10項目参考にしてください。 |
1)食事を楽しみましょう。 2)1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。 3)主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。 4)ごはんなどの穀類をしっかりと。 5)野菜・果物・牛乳・乳製品・豆腐・魚なども組み合わせて。 6)食塩や脂肪は控えめに。 7)適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を。 8)食文化や地域の産物を生かし、ときには新しい料理も。 9)調理や保存を上手にして無駄や廃棄を少なく。 10) 自分の食生活を見直しましょう。 |
骨や筋肉の”素”は毎日の食事から。
きちんと食べて食生活でも「ロコモに負けない身体」を。
「骨」を強くする食生活
骨はつねに生まれ変わっています。
生まれ変わるための材料が必要です。
骨は古くなると壊され、新しい骨がつくられます。骨は生まれ変わっているのです。そのときに骨をつくる材料が不足していると、骨がスカスカ(骨粗鬆症)になり、骨折しやすくなってしまいます。骨をつくる材料で最も重要な栄養素はカルシウムですが、日本人は一般的に不足しがちです。骨粗鬆症の予防には、1日に700~800㎎のカルシウムを摂ることが勧められています。カルシウムを多く含む牛乳・乳製品・小魚・緑黄色野菜・海藻類・大豆製品まどを毎日3度の食事の中で積極的に摂りましょう。
カルシウムだけでなく、たんぱく質、ビタミンD、ビタミンKもしっかり摂りましょう。
骨を強くするためには、カルシウムだけでなく、たんぱく質、ビタミンDやビタミンKも必要です。たんぱく質は骨の大切な材料になるので、十分摂るようにしましょう。肉・魚・牛乳・大豆などはアミノ酸バランスの良い良質なたんぱく源です。ビタミンDは腸でのカルシウムの吸収を高める働きがあり、鮭などの魚やキノコ類に多く含まれます。日光を浴びることで私たちの皮膚でもつくりますが、不足しないよう食事から十分量を摂るようにしましょう。また、ビタミンKは骨の形成や骨質の維持に働いており、納豆や青菜に多く含まれます。骨のためにはその他に、マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸なども大切な栄養素で、これらの栄養素を毎日の食生活で無理なく組み合わせて摂ることが大切です。マグネシウムは、大豆製品、海藻、魚介類などに多く含まれます。また、びたみんB6はレバーや鶏肉、カツオやマグロ、ピーマンなどに、ビタミンB12はレバー、さんま、あさりなどに、葉酸はほうれん草や春菊などの野菜やいちごに多く含まれます。
カルシウムの吸収を妨げる塩分やリン(リン酸塩)
カフェインの摂りすぎに注意!
加工食品などで使われている食品添加物の中にはリン(リン酸塩)が多く含まれているものがあり、過剰に摂るとカルシウムの吸収を妨げます。また、食塩やカフェインの摂りすぎはカルシウムの尿への排出を促す作用があります。骨の健康のためにも、加工食品やコーヒーなどの摂りすぎに注意し、減塩を心がけましょう。
「筋肉」を強くする食生活
エネルギーが不足するとやせて筋肉が減ってしまいます。
せっかく運動しても、食事をきちんと摂らなければ、やせて筋肉が減ってしまいます。筋肉の量を増やし、筋力を高めるためには骨と同様に材料が必要です。最も重要な栄養素はたんぱく質ですが、エネルギーの源となる炭水化物や脂質をしっかり摂っておくことも大切です。エネルギーが不足していると、身体は筋肉を構成するたんぱく質を使ってエネルギーを産み出そうとするからです。
たんぱく質はいろいろな食品を組み合わせて摂りましょう。
たんぱく質を多く含む代表的な食品は、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品です。たんぱく質は約20種類のアミノ酸からなる栄養素ですが、体内で合成できないため必ず食品から摂らなければならないアミノ酸が9つあります(必須アミノ酸)。動物性たんぱく質のほうが植物性たんぱく質より吸収効率が優れていますが、含まれる必須アミノ酸の量がそれぞれ異なることから、いろいろな食品を組み合わせて摂ることが大切です。特に高齢者は肉卵が不足しがちなので、積極的に摂りましょう。
たんぱく質とビタミンB6を一緒に摂ると効果的です。
たんぱく質の分解や合成を促進する栄養素がビタミンB6です。ビタミンB6が多く含まれているマグロの赤身やカツオ、赤ピーマン、キウイやバナナなどたんぱく質を合わせて摂るといいでしょう。1日3回の食事でたんぱく質を摂ることが大切です。筋肉は40歳代から0.5~1%ずつ減っていきますが、適切な運動習慣をつけ、きちんと栄養を摂ることで、この筋肉の減少を予防することができます。いつまでも自分の足で歩き続けるために、できることから始めましょう。
※日本整形外科学会 新概念「ロコモ(運動器症候群)」
ロコモ チャレンジから引用しています